迫りくる礼真琴の退団公演「阿修羅城の瞳」を予習してみた

星組・礼真琴の退団公演の演目が発表されてから随分のときが過ぎ、既にお稽古が始まっています。
そして私はようやく映像を見て予習しました!
普段なら星組に限らず発表された演目に原作があったり、すでに映画や舞台化されている作品であるときには比較的早い段階で「予習」するのですが、今回は珍しくここまで放置。
「劇団☆新感線」に関心が持てなかったのがその理由。
結論、食わず嫌いはダメですね。
不思議な世界観に惹き込まれる
ものすごく正直に言えば、この作品がさよなら公演であることに個人的には残念な思いがあります。
もともと和物より洋物が観たい!という人なので、作品の良し悪しに関わらず特にトップスターのさよなら公演では宝塚ならではの洋装男役を見たい派なのです。
ショーでその姿は存分に見られるとは思いますが、お芝居の洋装って別物の魅力がありますよね。
とはいえ、今回映像で『阿修羅城の瞳』という作品を見てみた結果「どんな舞台になるのか楽しみ!」と心から思いました!
ミュージカルの中に歌舞伎やコメディ、ライブ感覚のポップな音楽が折り重なり、壮大なスケールの舞台演出、そしてもちろん出演者たちの素晴らしいパフォーマンスが相まって、なんとも魅力的な作品でした。
星組公演のキャスティングと相関図を手元に置いて、舞台に登場する人物と照らし合わせながら見ていたのですが、みんなキャラ立ちがすごくて「宝塚版はこれ、どうするんだろう?」な場面が続出。
しかも、もともとが3時間近い舞台作品を1幕もの約100分に収めるとなると、1/3以上を削ることになりますよね。
さらには宝塚独自の歌場面やダンスシーンなどの演出を加えると、作品の全体像がどう変化するんだろう?と楽しみになってきました。
とにかくテンポよく場面が進んでいくし、出演者ごとに膨大な台詞、しかも早口言葉のような機関銃トークが多々あったので、タカラジェンヌ、がんばれっ!の気持ちにもなりました。(笑)
礼真琴×暁千星でなければならなかった
前作で、こっちゃん(礼真琴)のトップ就任以来ずっと相手役を務めてきたなこちゃん(舞空瞳)が退団し、相手役なしのまま卒業するこっちゃん。
なこちゃんの単独退団を聞いたときには寂しさでいっぱいになりましたが、一方で、多くのファンが「次作に舞空瞳ではつとめられない何かが控えている」と感じたのもまた事実。
そして『阿修羅城の瞳』が発表され、なるほど、と。
どんなタイミングで作品が決まり、どんなタイミングでなこちゃんの退団が決まったのか、その順序も私たちファンには計り知ることはできませんが、この作品が「礼真琴×暁千星」でなければ成立しなかったであろうことは容易に推察できます。
実際に映像で作品を見てみたら尚のこと、なこちゃんがトップ娘役として演じる役がないと感じました。
たぶん、なこちゃんでなくても、トップ娘役として「闇のつばき」という役を演じきることができる人材はほぼいないのではないかと思います。
過去にトップ娘役を務めたOGたちを思い浮かべてみても、なかなか浮かびません。
映像で見たゆりちゃん(天海祐希)が素晴らしすぎたのもありますが、女性が男性を演じる宝塚において娘役は「より可憐に」存在する傾向が強いので、闇のつばきが持つ芯の強さや存在感を演じ切るのは難しいのかも知れません。
こっちゃんとありちゃん(暁千星)が舞台上でハートをぶつけ合うことで、どんな化学反応が生まれるのか、ワクワクが止まりません。
濃すぎるキャラクターたち
主役の出門(礼真琴)と闇のつばき(暁千星)の可愛らしいコメディタッチの掛け合いは、こっちゃん、ありちゃん、絶対に面白くなりそうですよね。
男女で絡む二人の場面はすべてが楽しみ!
その他の登場人物たちにも期待が膨らみっぱなしで、勝手にタカラジェンヌに置き換えてニヤニヤしながら見てしまいました。
極美慎の正念場、この作品で飛躍を!
この作品の東京公演を最後に花組に異動が決まっているかりんちゃん(極美慎)。
同期のバリ路線スター聖乃あすかと並ぶことになるのは、ご本人にとってもファンにとっても、なんとも複雑な思いではないかと思います。
ここ最近のかりんちゃんの成長は著しく、いよいよ番手がつくのではないかと期待していただけに、花組で足踏みしないよう成長を続けてほしいと願うばかり。
そんなかりんちゃん、星組生としてのラストで「邪空(じゃくう)」という役に出会えたのはラッキーだったと思います。
とにかく出番も多いし、こっちゃんとの絡みも多いし、立ち回りや大芝居、その一方で繊細な感情表現も求められるような難しい、けれども「おいしすぎる役」ですね。
星組でずっと背中を見続けたこっちゃんの胸を借りて、思い切り「かりんちゃんらしさ」を見せてくれることを大いに期待しています。
この役で評価を得られれば、確実に花組での次のステップにつながると思います。
小桜ほのか、狂気を感じさせる!?
かりんちゃんと同じく、この公演を最後に専科に異動が決まっている小桜ほのかちゃんが演じるのは、鬼たちを率いる美惨(びさん)。
どんな役かと楽しみにしていたところ、のっけからぶったまげました。
奇声をあげる尼姿の夏木マリさんに圧倒され、こ、これを、ほのかちゃんがやるのかっ!?と。
でも、きっとやり切るんだろうな、と。
物語が進んでいくにつれ、いろいろな側面も見えてきて、これをほのかちゃんがどんな「宝塚」スパイスで演じるのか興味が湧きました。
気になるのは、ほのかちゃんの美声で歌うシーンは作られるのか?ということ。
どこまで宝塚版として手を加えられるのかは全体的に気になりますね。
詩ちづるはどこまで弾ける!?
うたちゃんの役名が「桜姫」なんて可愛らしい名前だったので、映像を見るまでは可憐なイメージを抱いていたのです。
そして映像を見て、、、笑いました。
うたちゃん、ぜひともこの機会に新境地を開拓してください、な感じですね。
キャラが濃すぎて、そして可愛らしいうたちゃんのイメージとかけ離れ過ぎていて、この突き抜けた感がなんとも期待大。
前作でも少々キャラ違いな役にコミカルなお芝居で果敢に立ち向かっていましたが、前作の非にならないぶっ飛びぶりの「桜姫」を、今度はどんな役作りで見せてくれるのかが楽しみ、というより興味津々です。(笑)
あのキャラでうたちゃんがこっちゃんに絡んだときの、こっちゃんの反応も楽しみです。
天飛華音・稀惺かずと、宝塚版でどうなるの?
この二人の役がオリジナル版ではあまり出番もなく、ほとんど目立っていなかった印象なんですよね。
もちろん役としての認識はできるレベルの存在ではありましたが、むしろ役で言えば三階衆(碧海さりお、夕陽真輝、大希楓)のほうが目立っていました。
でも宝塚的路線の視点で言えば、絶対的にかのんくん(天飛華音)、めぐちゃん(稀惺かずと)のふたりの位置付けが上のはずなので、宝塚版ではこの二人の役がもう少し目立つように改編されるのかな?と思いながら見ました。
こっちゃんが卒業し、かりんちゃんが組替えとなる星組。
宙組からもえこちゃん(瑠風輝)を迎えるものの、これからの星組を背負っていくであろう天飛華音、稀惺かずとの二人です。
そろそろ爆上げ準備も必要な気がしますが、どうなんでしょうね。
めぐちゃんは、2度目の新人公演主演も獲得したいところ。
間もなく発表される頃でしょうか。
美稀千種、ひろ香祐が芝居を締めてくれそう
この作品で重要な役割を担っていて、出番も多いのがこっちゃん演ずる出門(いずも)の師匠にあたるこの二人。
一人はみきちぐ組長が演じる南北一座の鶴屋南北、そしてもう一人がこりんちゃん(ひろ香祐)が演じる鬼御門の頭領・十三代目安倍晴明です。
みきちぐ組長は今回、とってもおいしい役ですね。
もしかしたら宝塚版では出番が削られるかもしれませんが、かなり出番も多いし、重要な役です。
オリジナルで演じていた役者さんとみきちぐ組長の持ち味はまったく重ならない印象でしたが、想像がつかない分、宝塚版のみきちぐ南北さんがより楽しみです。
そしてこりんちゃん。
ちょっとすっとぼけた雰囲気が絶妙だったオリジナル版の安倍晴明さん。
この役はひろ香祐で正解!って思いました。
映像を見ながらこりんちゃんの安倍晴明が浮かんでくるくらい、この役のイメージにフィットしていました。
そしてラスト近くで出門が安倍晴明に向かって発するセリフが、ね。
ぐっときました。
星組から旅立つこっちゃんと、これからの星組を支えていくこりんちゃんの現実とオーバーラップしてしまい、宝塚版でもこのセリフまんま言われたら号泣する自信しかないな、と。
あれは反則。
刀鍛冶・祓刀斎(ばっとうさい)が見たかった!
宝塚版の配役が発表された時点では作品を見ていなかったのでわからなかったのですが、今回、映像を見て残念に思ったことがあります。
それが、この「祓刀斎」という配役が宝塚版にないこと。
映像を見ながら配役表を探しても見当たらなくて、もしやこの関連シーンはバッサリとカットされるの!?と。
このシーンはぜひとも残してほしかったです。
出門と祓刀斎との会話のキャッチボールがほんとうにセンスがあって面白く、それでいてハートも感じられる秀逸さ。
ほとんど半分はカットしないと100分に収まらないので思い切ったカットが必要なのは仕方がありませんが、この場面は見たかった!
その他いろいろ気になったこと
私にとってはこれが「劇団☆新感線」との初遭遇だったのですが、なかなか不思議な世界観を楽しませてもらったので、宝塚版にもさらに期待が膨らみます。
それにしても、不思議な世界観ですね、「劇団☆新感線」の舞台は。
命尽きたと思った人がみ~んな生きてたり、歌舞伎やロックが入り混じったり、シリアスとコメディのバランスも絶妙。
八百屋舞台に光や舞台装置を駆使した総合芸術。
あ、あと「糸」の演出の仕組みがナゾでした。
じーーーっと見てみましたが、最後まで仕組みが理解できなかったです。
宝塚版でリベンジしてみます。
そしてこの作品は舞台の下手側から延びる「花道」が多用されていましたが、宝塚では銀橋に置き換えた演出になるのでしょう。
ところで随所に登場していたギターの弾き語りしていた人がいましたが、あれは宝塚では役付きの人たちが歌うのかな?
こっちゃんの歌声で聴かせてほしいな~と思いながら見ていましたが、どうなんだろう?
主題歌っぽいから、こっちゃんも歌いそう。
そうそう、鬼さんたちがたくさん出てきて、出番もそこそこありましたが、オリジナルでは完全に全身奇抜な被り物です。
宝塚版の鬼さんたちはどんな出で立ちで登場するのでしょうか。
最近の宝塚歌劇は「リアリティ」を求める傾向があるので、オリジナルの奇抜な路線を継承しそうで心配。
個人的には「宝塚らしさ」をしっかりと残しつつ、新しい作品として見せてくれることを期待します。
小柳先生、お願いしますね。
まとめ
スーパートップ・礼真琴がいよいよ宝塚を巣立つときが近づいてきました。
きっと「そと」ではアーティスト・礼真琴の争奪戦が繰り広げられていることでしょう。
いや、もしかしたらもう決まっているのかも知れませんね。
未だ退団公演のチケットが手に入るのかわからない状況が続いていますが、これで予習はばっちり。
大劇場公演は遠征しないことが決定しているので、大劇場の千秋楽ライブ配信が初見になる予定です。