「100周年を」と言われていた柚希礼音、110周年は礼真琴、120周年は?

宝塚歌劇には、華やかな舞台を観るだけでなく、初舞台を踏んだ新人さんたちが紆余曲折スターの座を手に入れるまでの物語を楽しむ、という醍醐味があります。
ご本人たちにとっては、楽しむどころか苦しい時期も沢山あると思いますが、ファンの熱い想いに支えられつつ乗り越えていくのがタカラジェンヌなのかな、と勝手に想像しています。
なかでも、早くから劇団に「あなたに期待してますよ」とお墨付きをいただいたスターさんたちにとっては、「喜び」よりも「プレッシャー」のほうが大きいのが現実かも知れませんね。
10年に一度、巡って来る大きな周年行事。
今日はその周年行事を牽引するトップスターについて考えてみようかな、と思います。
周年行事には盛り上げるための「軸」が必要
120周年まで、あと9年。
大きな周年行事が行われるとき、劇団は常に「軸(話題)」となるトップスターを据えることを好みます。
そしてファンも、早くからそれを予想して盛り上がります。
過去の周年行事について振り返ってみました。
1984年│70周年
アイドル並みの人気を誇った大地真央が月組のトップスターでした。
当時はまだ東京公演が通年ではありませんでしたが、大地真央がトップスターだった頃の月組は、ほぼ3月と8月が東京公演だったと記憶しています。
当時ファンの間では、大地真央のアイドル人気を見越して、学生が観劇しやすい春休みと夏休みに合わせて東京公演をおこなうよう月組のスケジュールが組まれている、とウワサされていました。
その理由が本当かどうかはわかりませんが。。。
1994年│80周年
大地真央の再来と言われ、研1でミーマイの新公主演に抜擢、研7でトップスターに就任した天海祐希が月組のトップスターでした。
ゆりちゃん(天海祐希)はトップ就任当時まだ研7で新公学年でしたから、その新公で主演したのが73期の同期生である姿月あさと、というのも話題になりましたね。
いまの時代で言えば今年「稀惺かずと」がトップスターに就任するということですから、いやはやすごい時代でした。
2004年│90周年
宙組の「タカハナ」(和央ようか&花總まり)がブームのように取り沙汰されていた時代。
4月1日に行われた記念式典はスカステで生放送され、紋付き袴で大劇場に勢揃いする約400名の生徒(花組と花組出演中の専科・春日野八千代、松本悠里、轟悠は東京公演中で欠席)の姿は壮観でした。
なによりも話題をさらったのは女帝と呼ばれた「花總まり」。
生徒約400人が紋付で勢揃いする中、なんとセンターから一人、せり上がり、独唱したのです。
花總まり、恐るべし。
はなちゃん(花總まり)に対する劇団の「特別扱い」は桁外れでしたね。
たかちゃん(和央ようか)が人気トップスターに成長したのは、はなちゃんの「ムコ様」だからだとも揶揄されていました。
でも、あの時代のタカハナ人気はちょっと異常でした。
退団公演では「和央の会」の貸切公演までありましたし。
ただ、ハナちゃんの退団に関しては裏ですったもんだがあったようなので、12年もの長きに渡りトップ娘役として活躍した彼女が、退団イベントもなく静かに宝塚を去っていったのは残念でした。
2024年│100周年
柚希礼音の人気が頂点に達しているタイミングでの100周年。
この時ばかりは「劇団の計算」が見事に当たったと言える100周年でしたね。
研11になりたてでのトップ就任でしたが、昔であればさほど早いとも思わない学年。
とはいえ、近年としては若くして就任したイメージが強いです。
トップ就任当初は「大丈夫かな?」と心配になるほど「不人気」と言われたこともありましたが、劇団はちゃんと勝算があったのでしょう。
下級生時代から抜擢を繰り返して育てあげた「柚希礼音」ブランドは、ジワジワと人気を獲得していき、100周年のときには「レジェンド」と呼ばれる人気ぶりでした。
トップスター5人の中には上級生が2人(蘭寿とむ、壮一帆)いましたが、劇団がトップ・オブ・トップに柚希礼音を位置付けているのは誰の目にも明らかでしたし、在任期間の長さも手伝って、学年のバランスもうまく処理されている印象でしたね。
ちえちゃんの『REON in BUDOKAN〜LEGEND〜』、私も武道館でその伝説に参加させていただいたのを昨日のことのように覚えています!
2024年│110周年
110周年の軸となるはずだったのが、まぎれもなく礼真琴、そして95期の面々。
何年も前から、ときには強引とも言える人事を発令しながら、綿密に計画されてきたであろう110周年の「95期計画」は、コロナ禍と宙組に端を発した例の重大案件により、すべてが見事に吹っ飛んでしまいました。
劇団としてはもちろん想定外の結末だったでしょうし、ましてやそれをワクワクMaxで待ち望んでいたファンにとっては、なかなか消化しきれない当てどころのない悔しさを抱える結果となりました。
私自身も、どれだけ時間が経っても「あきらめきれない」なんともモヤモヤした思いを抱えたまま、今に至っています。
何度でも言います。(笑)
これは何年先でも今と同じように「見たかったな」「なんでああなっちゃったのかな」と、ひたすら思い返すのだと思います。
とはいえ、ときは確実に次の120周年へと動き始めているわけで、礼真琴も95期の面々も次のステージへと向かっていますので、ここはひとまず頭を切り替えて。
次なるステージへ。
選ばれしトップスターの任期
トップスターに任命されるとき、同時に任期が告げられるものなのでしょうか?
これ、ファンとしてはとっても気になります。
劇団にも当然ながら営業戦略なるものがあって然りなので、すべてのトップさんに「自分で決めていいですよ」というわけにもいかないとは思いますが、全員が全員、決められた任期を告げられているわけではないような気もします。
とはいえ、これまでにも「ワン切り(お披露目が退団公演)」「ハログバ(お披露目と退団公演の2作)」などという言葉が氾濫する時代もありましたよね。
その逆に、劇団が周年行事を盛り上げるために白羽の矢を立て、長期トップを暗に明示する場合もあるようです。
柚希礼音がトップ就任時に告げられたこと
退団後にいろいろぶっちゃけていたトップさんもいましたし、今でもいろんな説が耳に入ってはきます。
100周年をトップ・オブ・トップとしての役割を果たしたちえちゃんが、退団間もない頃にインタビューで「トップ就任が決まったとき」のことを語っていたことがありました。
なんのインタビューだったかな~なんて検索してみたら、出てきました。
中井美穂さんとのトークを展開するネスカフェの『宝塚☆スタートーク』というシリーズ。
シリーズものになっているので全部見ると1時間以上にもなる長いインタビューなのですが、久し振りに見なおしてみました。
退団を決めたのはいつ?という質問に対して、ちえちゃんがこんな風に答えています。
トップになるときに「できれば、100周年を盛り上げることを、何かできればいい」と言っていただいていて、100周年を目標にさせていただきました。
ちえちゃんがトップに就任したのは2009年4月ですから、それよりも前にこれを告げられているということ。
つまり、「少なくとも、5年以上はトップをお任せします」と言われたわけです。
当時からファンの間でも「100周年は柚希礼音がメイン」と言われていましたので、さほど驚くようなことではありませんが、これで、やはり劇団は「計画的に柚希礼音を100周年の顔にしようと動いていた」というウラが取れました。(笑)
100周年を迎えたときに、そろそろゴールを考えようと思い(退団を)決めました。
100周年の大役を無事に勤め上げ、翌年に退団したちえちゃん。
礼真琴の「110周年の顔」計画とあまりにもスケジュールが似通っていて、これも見えない赤い糸かしらと勝手に思い込んでいる今日この頃。
カンペキだった礼真琴のトップ就任計画
ちえちゃんがトップ就任時に劇団から言われたという「100周年を盛り上げてほしい」の言葉。
こっちゃんも同じように「110周年を盛り上げてほしい」って言われてトップに就任してますよね、きっと。
2019年に研11でのトップ就任。
そして110周年までの距離感は5年。
110周年イヤーの翌年、2025年に研17にて退団。
ちえちゃんと丸っと同じスケジュールで進んでいるのが、なんとも、ね。
劇団としては、こっちゃんがトップに就任するタイミングの調整については、カンペキだったと思います。
ちえちゃんの後にさゆみちゃん(紅ゆずる)ではなく、専科からみっちゃん(北翔海莉)が異動して短期トップになったのも、私は「みっちゃんをトップにする理由があった」というよりも、「礼真琴の旬を調整するため」に必要だったからだろうな、と思っているんです。
こっちゃんを110周年の顔にするためには、そのバトンを握らせるまで最短でも4年以上は時間を空ける必要がありました。
さゆみちゃんが直接ちえちゃんから引き継いでも、その任期を務めるだけの体力はないと判断しての、みっちゃん投入。
みっちゃんものちに「驚いた」と話していましたから、劇団の計画的な時間稼ぎだったんじゃないかという気がします。
もうひとつは、長く続いた「柚希体制」に新しい風を吹かせることも必要だったのかと。
全く違うタイプの実力派みっちゃんの背中を見て星組生は多くを学び、そしてさゆみちゃんにバトンが渡され、ともに長い時間を過ごしてきた生え抜き同士の「組内昇格」で礼真琴を盛り上げる。
ここまではカンペキなシナリオ。
でも残念ながらコロナ禍に突入し、そののち約3年間のスケジュールは人事も含め混沌としていました。
見えない敵と戦いながらの自己管理、衛生管理、そして度重なる公演中止やファンから届けられる悲喜こもごもの声、生徒さんたちの精神的なストレスは相当なものであったと思います。
ファンにとって衝撃的だった「礼真琴の休養」
生徒さんたちだけでなく、私たち一般の生活でも当たり前の日常が奪われ、職場での諸々のストレスに苦しんだ日々でした。
そして発表された「星組トップスター礼真琴の休養」。
いろいろな憶測が飛び交いましたが、私は「礼真琴に110周年まで頑張ってもらうための劇団の決断」だと捉えていました。
こっちゃんが不安定な状況の中で、盟友「瀬央ゆりあ」を星組から異動させたことについては少々疑問が残ったものの、任期も折り返しを迎えていた中で、次世代の星組を担う人材育成は急務でしたから、そこはいろいろな裏事情があったのでしょう。
ただ、その後に劇団の根幹を揺るがすあまりにも衝撃的な出来事が起こったので、なおちゃん(瀬央ゆりあ)やみなちゃん(水美舞斗)の専科異動が当時の計画とは違う方向に向かった結果として現在に至っている可能性は否めませんが。。。
とりあえず、礼真琴を110周年の顔にしたかった劇団は、こっちゃんの心身の健康を最優先に考え休養することを提案。
当時は「こっちゃんが辞めたがっている」などの噂も多く耳にしましたが、何事にも必要以上の責任感で全力投球し過ぎて心身のバランスを欠いていたこっちゃんに、劇団が「いったんゆっくり休んで整えよう」と提案をして、それをこっちゃんが受け入れた形なのかな、と理解しています。
就任時に「110周年を盛り上げて」と言われているとすれば、自分の任期を全うしようとした、こっちゃんの勇気ある決断だったのではないかと。
すべては想像の域を脱しませんが。
そして110周年イヤーが終わり、退団記発表。
記者会見で退団を決意した時期は?の質問を受けてこっちゃんの回答は、、、
宝塚歌劇110周年という記念すべき年を自分なりに全うしてから卒業したいという思いに…
100周年を託された星組のレジェンド柚希礼音、110周年を託された星組の新しいレジェンド礼真琴。
さて、120周年を託される次の「レジェンド」は⁉
120周年の顔は水面下で計画実行中⁉
ここ数年の宝塚を見ていれば、120周年に向けて劇団が誰を推し出していこうとしているかは容易に想像できますよね。
宝塚歌劇団の御曹司、星組の稀惺かずと。
劇団が彼女を大切に大切に育てていることは、誰の目にも明らかです。
入団当初は「ごり押しが始まるのでは?」との声もあった中で、むしろ「売り出す気がないのか?」と思うくらいの静けさでした。
ジワジワ這い上がってきた御曹司
周囲から「ごり押し」の批判を受けないように、ゆっくり、ゆっくり、彼女のペースに合わせて徐々に役付きを上げられてきた印象のめぐちゃん(稀惺かずと)。
下級生の頃は印象も薄く、あまり目立たない場所で頑張っている印象でしたが、満を持して『1789-バスティーユの恋人たち-』の新人公演で主演に抜擢されたときの彼女は、本当に素晴らしかったです。
トークを聞いていると、厳しくしつけられたんだろうな、という意味での「育ちの良さ」がにじみ出ていて、可愛らしい「めぐちゃん」にほっこりさせられますが、舞台での安定した歌唱力、演技力、そして何よりもキラキラしたスターのオーラ。
順調に「実力」でスターの座へ駆け上がっていくであろう手ごたえを感じた新人公演でした。
宝塚を目指した時から「自分がどう見られるか」ということは本人も十分に理解していたはずですし、それでも臆せず自分の夢に飛び込み、地道に努力を重ねて実力を磨いてきて今があるわけなので、素直に応援したくなります。
めぐちゃんパパは、度々マスコミに娘さんのことを尋ねられ「みんな大変なんだから」「みんな頑張っているんだから」と娘さんを特別扱いしないでほしいことを伝えています。
でも、もうそれも心配ご無用。
めぐちゃんは自らの努力で実力をちゃんと備えた若手スターに成長しています。
今公演では、ふたたび新公の主演が与えられましたね。
スーパートップ礼真琴の退団公演で主演が回ってくるのは「劇団の期待を背負う」という特別な意味があることは明確。
また一歩、自らの足で階段を上っていくめぐちゃんの活躍が楽しみです。
120周年に向けた組替えは?
単純に考えれば、115周年の中心には100~102期がいて、120周年の中心にはそれ以降103期~106期の顔ぶれが並ぶことになるのかな。
柚希礼音、礼真琴、と星組のレジェンドが周年ごとに主軸を担ってきた近年、そして星組で同じ間隔を空けて次世代の御曹司が順調に成長していることを考えると、120周年の軸はやはりその御曹司「稀惺かずと」なのでしょう。
花組が「かわいこちゃん獲得」の傾向にあるのに対し、星組は周年スター育成が命題⁉(笑)
120周年を迎えるタイミングで人気のピークを持っていきたいとすれば、トップ就任時期はレジェンド二人と同じくらいの速さが必要ですよね。
でも、めぐちゃんはちえちゃんやこっちゃんのような抜擢続きの爆上げ育ち方をしていないので、4年後の研11でトップというのはちょっと想像しにくい。
ただ、宝塚の4年って、短いようで意外とごっそりすべてが変わってしまうに十分な月日ですから、星組の体制ががらりと変わる中で、ここから一気に爆上げされる可能性がないとは言えません。
ただ、そうなるとかのん君(天飛華音)がいずれ組替え⁉
やっぱりVISAガールとして花組異動⁉

そっか、それもないではないな。
すっかりかのん君がVISAガールと決めつけている私です。(笑)
今回はがっつり星組に偏った流れになりましたが、またいずれ、ゆっくりと120周年に向けた全組に渡る「謎解きパズル」を考えてみたいと思います。
最後に改めて思うこと
どんなときでも「勝手に」感情移入して一喜一憂しながら、贔屓の生徒さんのタカラジェンヌ人生に寄り添い共に歩むのが宝塚ファン。
私はどちらかというと「夢中にはなれどライトなファン生活」を送ってきたので、特定のスターさんの会に属して活動をしたこともなければ、初舞台からひと筋!のような贔屓もいません。
その時代ごとの流れに身を任せ、スターさんが誕生する過程を外野席から遠く眺めて楽しんでいるタイプです。
なので、その中で自分のアンテナにビビビッと引っかかるスターさんが現れると、自分の中の「ブーム」がやって来る。(笑)
それが今は礼真琴であり、瀬央ゆりあであり、95期並び。
こっちゃん(礼真琴)の前のビビビッは柚希礼音。
ちえちゃん(柚希礼音)時代にどっぷり星組に浸っていたおかげで、下級生時代から礼真琴の存在を身近に感じていましたし、スターの階段を上っていく過程にも外野席から立ち会うことができました。
ちえちゃん卒業後、私のようにこっちゃんに流れた宝塚ファンって、相当数いたんじゃないかな。
贔屓のスターさんが可愛がっていた下級生、贔屓のスターさんを慕っていた下級生を応援したくなるのも、宝塚ファンのあるあるですよね。
だから今度は、こっちゃんが卒業してからも、花組に異動するかりんちゃん含め、こっちゃんを慕っていた下級生のタカラジェンヌ人生を見届けたいと思っています!
そうやって「宝塚沼」から抜け出せない、魔のループが続いてゆく…。(笑)
それもまた、楽し。